a long vacation

書かれた内容はすべてフィクションです

the clash「lost in the supermarket」和訳・歌詞解釈

 

 

 

https://youtu.be/hZw23sWlyG0

 

 

I'm all lost in the supermarket

I can no longer shop happily
I came in here for the special offer
Guaranteed personality

 

スーパーマーケットで迷子になっちゃった

楽しく買い物なんてもうできない

特別な商品が欲しくてここに来たのに

保証付きの人格が欲しかったんだ

 

I wasn't born, so much as I fell out
Nobody seemed to notice me
We had a hedge back home in the suburbs
Over which, I never could see

 

望んで生まれたというより、世界に落ちてきたみたい

誰も僕のことを気にかけてはくれなかった

郊外の家には垣根があって

けして外を見ることはできなかったよ


I heard the people who live on the ceiling
Scream and fight, most scarily
Hearing that noise was my first ever feelin'
That's how it's been, all around me

 

色んな人が暮らしている声が天井から聞こえてくるんだ

叫んだり喧嘩したり、とても怖かった

でもその騒音がはじめて感じたことだった

僕はそうして生きてきたんだ

 

I'm all lost in the supermarket

I can no longer shop happily
I came in here for the special offer
Guaranteed personality

 

スーパーマーケットで迷子になっちゃった

楽しく買い物なんてもうできない

特別な商品が欲しくてここに来たのに

保証付きの人格が欲しかったんだ

 

I'm all tuned in, I see all the programs
I save coupons from packets of tea
I've got my giant hit, discotheque album
I empty a bottle, I feel a bit free

 

すっかり社会に馴染み、テレビ番組を見て

紅茶の袋の割引券を集める

大ヒットしたディスコのアルバムも持ってるし

お酒を一瓶開ければ少し自由な気持ちになれる


The kids in halls and the pipes in the walls
Making noises for company
Long distance callers make long distance calls
And the silence makes me lonely 

 

広間の子供たち、壁に通されたパイプ

働く人々の騒音

長距離電話をしている人たちは僕だけを一人にするようだ

その静けさが僕を孤独にする

 

I'm all lost in the supermarket

I can no longer shop happily
I came in here for the special offer
Guaranteed personality

 

スーパーマーケットで迷子になっちゃった

楽しく買い物なんてもうできない

特別な商品が欲しくてここに来たのに

保証付きの人格が欲しかったんだ

 

And it's not here
It disappeared

I'm all lost…

 

ここにはないよ

それは消えてしまった

僕は迷子…

 

 

 

 

the clashについて

 

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クラッシュは、1970年代から80年代にかけて活動した、パンクロックバンドです。

パンクロックとは、一言で言うとこういう人たちの音楽(これはかなりやりすぎな方だが)。↓

 

 

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パンクロックは、革ジャンと鋲付きベルトという特徴的なファッションと反社会的な歌詞、単純で荒々しいギターの音で、当時のイギリスやアメリカの若者を虜にしました。

他に有名なパンクロックバンドはsex pistols、damnedなど。このふたつとクラッシュは、合わせて「三大イギリスパンク」なんてくくりで呼ばれたりします。

 

その中でもクラッシュは他のバンドと一線を画し、パンクロックらしからぬ詩的で文学的な歌詞と、スカ、R&Bなどの他のジャンルとパンクとの融合を試みるなど、かなり実験的な、多様な音楽性で知られています。

 

この曲も、いわゆるパンクロックというよりは、もっと繊細な感じがします。

 

 

・歌詞について

 

 

I'm all lost in the supermarket

I can no longer shop happily
I came in here for the special offer
Guaranteed personality

 

スーパーマーケットで迷子になっちゃった

楽しく買い物なんてもうできない

特別な商品が欲しくてここに来たのに

保証付きの人格が欲しかったんだ

 

 

 

まず、この歌詞の「スーパーマーケット」は、単なる文字通りの意味だけでなく、現代の生活や、大量消費社会の象徴としてのスーパーマーケットです。

主人公はそこで「迷子になって」いる、つまり正しい生き方や生活がわからなくなっています。

 

なぜ彼がスーパーマーケットに行き着いたのかというと、「guaranteed personality」が欲しかったからだと説明されています。「guaranteed」は保証(書)、「personality」は人格と言う意味なので、この語は「保証付きの人格」と訳されます。

 

どういう意味でしょうか?

 

英語の歌詞解釈サイトを参照してみると、これはどうやら「消費者がスーパーマーケットで商品を選択することによって、自らのアイデンティティが保証される手段を社会が提供してくれること」を指すようです。

 

彼はスーパーマーケットで商品を選ぶことによって、その判断によって、自らの人格を定義しているというわけです。

が、ここでひとつ疑問。

なぜ「スーパーマーケットで商品を選ぶ」という行為だけわざわざフォーカスしているのでしょうか?

 

だって人格なんて、ふつうの友達や人間関係のなかで定義・保証されていくのものでしょう。「スーパーマーケットの商品選択」という歪な例をわざわざ出す必要はないのではないでしょうか。 

 

 

とにかく続きを見ていきましょう。

 

 

I wasn't born, so much as I fell out
Nobody seemed to notice me
We had a hedge back home in the suburbs
Over which, I never could see

 

望んで生まれたというより、世界に落ちてきたみたい

誰も僕のことを気にかけてはくれなかった

郊外の家には垣根があって

けして外を見ることはできなかったよ

 

 

 

この部分は主人公の生まれを歌っています。「垣根があって外を見ることができなかった」というのは、物理的な問題であると同時に、心理的な問題でもあります。この頃から彼と外界とは隔たれていたわけです。

 

 

I heard the people who live on the ceiling
Scream and fight, most scarily
Hearing that noise was my first ever feelin'
That's how it's been, all around me

 

色んな人が暮らしている声が天井から聞こえてくるんだ

叫んだり喧嘩したり、とても怖かった

でもその騒音がはじめて感じたことだった

僕はそうして生きてきたんだ

 

 

この部分でも引き続き主人公の生まれが歌われています。ここでキーとなるのは「most scarily」という部分。ネイティブは、あんまりこういう言い方をしません。

歌詞解釈サイトによると、これは意図してのことで、作詞者のジョー・ストラマーはあえてぎこちない表現を使うことによって、この詩に「子供の書いた作文のような印象」を与えようとしているのだそうです。クラッシュすげえ。

「how it's been」は「どうやってそうあったのか」つまり「過去の成り立ち」なので、「こうして生きてきた」と訳しました。

 

 

I'm all tuned in, I see all the programs
I save coupons from packets of tea
I've got my giant hit, discotheque album
I empty a bottle, I feel a bit free

 

すっかり社会に馴染み、テレビ番組を見て

紅茶の袋の割引券を集める

大ヒットしたディスコのアルバムも持ってるし

お酒を一瓶開ければ少し自由な気持ちになれる

 

 

 

さてサビを挟み、主人公の現在の生活へとシーンが移ります。主人公は大人になっているということが、「empty a bottle」という表現から分かります。

ここでの「tune」は「調子」の意味の他に、「調律する、調子を合わせる」という意味があり、よって「i'm all tuned in」は、「(社会によって)矯正された」と訳すことができます。

訳詞にする際には「矯正されて」とすることも考えましたが、詞の感じからは、主人公がどこか俯瞰して自分のことを見ているようなイメージを抱きました。少なくとも矯正されていることに不快感を抱いている様子もなく、むしろ可能な限り順応しようとしているので、「すっかり社会に馴染み」としました。

「program」は計画、テレビ番組、もしくはそのままプログラムと訳すことも出来ますが、「see」と組み合わせてみると、「計画」や「プログラム」は実生活を描写するここの部分には訳としてそぐわなそうです。なのでここはテレビ番組のことでしょう。

「save」は「守る」だけでなく、「集める」という意味もあり、続く「紅茶の袋の割引券を集める」という一文からは、必死に忙しない生活に「tune」しようとしている主人公の様子が窺えます。

続く二文もそうで、ディスコは当時の流行ですし、世俗的なことを、社会に迎合するために酒を飲んで忘れようとしています。

 

 

The kids in halls and the pipes in the walls
Making noises for company
Long distance callers make long distance calls
And the silence makes me lonely 

 

 

ここでは「音」について触れられています。この曲の詞で特徴的なのは、「外界」と「私」が意図して切り離されている、という点です。例えば最初の部分では「垣根」によって「私」と「外の世界」は切り離されています。

続く部分でも「叫んだり、喧嘩している人」がいて、「私」はその声が天井から漏れているのをただ聞くだけです。

そしてさらに続く場面でも、ディスコアルバムやテレビなどの「社会」と「私」が切り離されています。

ここで「i'm all tuned in」という一文が鍵になってきます。確かに「矯正された」のは矯正されたのですが、それは外面だけで、主人公の内面はまだ大量消費社会や当時の社会的な生活に順応しきってはいないのです。

 

ここを踏まえて歌詞をさらに考察してみると、最初の「なぜアイデンティティの保証について、スーパーマーケットでの商品選択という極端な例を出すのか」という最初の疑問の説明がつきます。

彼にとっては友人も生活も、テレビ番組を見ることも、紅茶の袋の割引券を集めることですら、どこか自分とは隔てられて存在しています。そして、都会的な生活を空虚な目で、俯瞰的に見ています。

その「主人公が都会的な大量消費の生活に上手く馴染めない感じ」と、「現代の生活の風刺」の2つを象徴する事象が「スーパーマーケットの商品選択によるアイデンティティの保証」であり、そしてそれを表現するものこそが「スーパーマーケットで迷子」という言葉なのです。

 

アイデンティティの選択の例として、都会の生活に上手く馴染めない彼にとっては、友人との交流はふさわしくないのです。

 

 

疑問が解決されたところで、あらためてこの部分の歌詞を見ていきましょう。

 

「company」は直訳で「会社」ですが、ここでは広く「働く人」とした方が適訳でしょう。なので「making noise for company」は「働く人々の騒音」としました。

続く「Long distance callers make long distance calls」もカギです。直訳では「長距離電話をしている人は長距離電話をしている感じがする」となりそうですが、前の段の解釈を踏まえると、主人公の心の距離に言及した表現であるということがわかります。なので「長距離電話をしている人たちは僕だけを一人にしているようだ」と訳しました。

 

 

And it's not here
It disappeared

I'm all lost…

 

ここにはないよ

それは消えてしまった

僕は迷子…

 

 

 

そしてもう一度サビを挟み、「それはここにはない」「それは消えてしまった」という二文が歌われます。そして曲はフェードアウトします。

「それ」が何なのか、という疑問が湧いてきますが、今までの考察から考えるに、「それ」は主人公が都会の生活に描いていた理想や憧れといった抽象的なものを指しているのではないかと考察できます。

郊外の家で自らと外界の隔絶を感じ、都会で暮らすも夢破れ、大量消費社会、都会の暮らしに上手く馴染めていないという主人公像が、ここではっきりと浮かんできます。

 

その主人公の様子を巧みに表した一文が「スーパーマーケットで迷子だ」ということなのです。

 

 

 

この詞を書いたジョー・ストラマーは、本や新聞をよく読む人で、かなりのインテリだったらしいです。

それはクラッシュの他の詞にも現れており、それらはバンドが解散し、ストラマーが亡くなった今でも、ファンによって聴き継がれ、考察がなされています。

 

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ストラマー本人は、メンバーのミック・ジョーンズの幼少期(ロンドン南西部のワンズワースで祖母と暮らした)を想像してこの曲を書いたと語っています。

 

 

・重要表現・単語

 

no longer

もはや 〜ない

 

Guarantee

保証(する)、確約する、保証書付きの

 

personality

個性、性格、人格

 

disappear

消える、姿を消す、なくなる

 

hedge

垣根、生け垣

 

empty

中身のない、空っぽの