a long vacation

書かれた内容はすべてフィクションです

散文のレッスン

「君はいつも、他人に見ろと言われたものしか見ていないように思える」

 

説教臭い看板を右に曲がり、路地に入る。だんだん辺りが暗くなり、太陽の光が届かなくなってくる。ちくしょう。新しい、糊のきいたシャツを着たくたびれた男。間違いなく服に着られている。

そわそわしてきた。辺りが気になるのだ。

この今は使われなくなったトンネルのなかで、俺は人を待っていた。顔がやつれていないかが心配だ。俺は人の目を気にする性質で、常に自分がどう見られているかが至上命題だ。思わず持ってきた手鏡を取り出し、自分の顔を見た。

かなり血色が悪い。目は充血しており、肌ツヤは絶望的で全体的に血の気が引いている。髪は寝癖っていたところを無理やりポマードで撫で付けているから、どこかぺしゃっとしていて不自然だ。

俺は絶望した。そうしてそわそわしながら、髪の手直しを開始したが、無駄だった。

 

「オイ」

 

声をかけられた。ずいぶんと早いお着きである。約束の時間まであと7分もある。

 

「何でしょうか」